探偵ノート

第003号 – UA-800 の陰影礼賛

Update:

はっはっは、景気づけのジントニックをあおった後に、今、カリフォルニアのシャルドネを頂きました(少々良い気分になっている)。ニューヨークに向かう飛行機 UA-800便、これには既に何十回も乗っているに違いないのです。離陸後の飛行機の中では私は完璧に無国籍状態にひたれます。宇宙に通じる気分になれます。地上の凡庸な自分から遠い気分にもなれます。ヘソが真ん中に戻ったかなと感じます。ニュートラルな判断ができるように錯覚します。直ぐ少し前までの自分が謙虚に反省できます。だからとても貴重な時間なので、隣のアメリカ人のようにノンビリ眠ってなどいられません。

マイレージを使って乗り込んだビジネスクラスの広いシートにフットレストは、私にとっては快適なビジネス環境です。以前どこかの雑誌に「移動オフィス」と命名して機内で多くの仕事をこなす私の癖を紹介しましたが、本当にここでは仕事に集中できます。ザアーーーっというジェット音も私には快適なホワイトノイズです。

探偵団風に観察してみると、ここには完璧な「適光適所に従った陰影礼賛」の思想が生きていることが解ります。手元には個人の仕事に十分な広さに500ルクスのタスクライトが当たっています。機内読書灯という奴です。そしてアンビアント・ライトとしての3種類の間接照明。中央天井部と、両わきの収納棚上、そして両サイドの窓側壁面を照らし出すものです。通路部分などには全般照明はありません。全体を包むアンビアント・ライトでほんのりと、そしていくつかの客席に点るタスクライトの反射光で、フライトアテンダンス(昔のスチュワーデスさん)の表情も美しく色っぽく見えてきます(飲んでいるせいかな)。

「無駄なところに光をやらない」そんな簡単なことが、けっこう難しくなってしまった世の中です。飛行機の中の「移動オフィス」のランドスケープを気に入っています。ニューヨークまであと7時間ほどでしょうか。もう一杯何か飲もうかな…?

おすすめの投稿